長男から学んだこと
夫婦で親しくお付き合いさせていただいているのが、静岡市を拠点にご活躍中の女流水墨画家中野素芳先生である。毎年、この季節に静岡で展覧会を開催されるので、我が社も協賛企業のひとつに名を連ねさせていただいている関係で夫婦揃って初日に伺うようにしている。今年も『心の浄土』をテーマにスケールの大きい作品が展示されていて繊細な中にも女性でありながら男性的な強さを感じる作品となっている。素芳先生の人柄が滲み出た素晴らしい作品だと感心した。
さて、今回の水墨画『素芳展』のプレイベントは、両手義手の画家である大野勝彦先生の講演であった。大野先生とは、私がうちの家内と出会うご縁(鍵山イエローハット相談役を団長とするシリア旅行)を演出してくれた三重県の友人赤塚さんが結婚祝いとして招待してくれた津市で開催された大野先生の講演会が最初の出会いである。その時に先生が書かれた書は、現在我が社の玄関に飾ってある。大野先生のお話は、人としての円熟味が一層増した感じがして感動した。家族の支えや美術館を建てる夢を実現してきたことに対する感謝の気持を強く感じたが、それも全ては両腕を事故で失ったからだと全てを肯定的に受け入れておられる姿に大いに敬服する。厳しい時代に生きる者のひとりとして、この大野先生のお姿には本当に勇気をいただける。
さて、静岡と言えば、昨春ワタミに就職したうちの長男がこの春から店長として静岡市内の店に赴任している。この度久し振りに静岡で再開した仲間と共に長男のいる和民を訪れた。長男は、店長としてきびきび働いていた。我々が訪れた17時45分ごろはまだ客数もまばらであったが、すぐにお客様でいっぱいになった。四国への出張から帰ってすぐに翌朝には静岡に向かって車を走らせたので結構疲労感があったのだが、居酒屋とはいえ、かなり美味しい食べ物(しかも安くて安心)を食べてホッピーの焼酎割りなどを飲んで楽しいひと時を過ごしたら疲れも吹き飛んだ。
翌日、長男と話をしてみると、短期間でかなりの成長を遂げている。店長という要職に23歳で就いているので経営者的な感覚が既に身に付き始めていた。顧客満足の為には何をすれば良いか、どうすればお客様に喜んでもらえるかが意思決定の中心に置かれているのには本当に驚いた。部下(主にアルバイトの学生)に対する接し方においても、既に指示・命令の裏に存在する背景や意義を丁寧に伝えて納得して仕事をしてもらっているという。長男自らが「店は店長で決まる。やるべきことをやらせ切ることが出来る店長でなければすぐに店の規律が緩んで成績が下がる。今、この店は前年対比で107%で伸びている。」と胸を張った。我が社の部門長、店長に聞かせてやりたい言葉ではないか。いやいやかくいう私自身にも言い聞かせたい言葉である。
今、ワタミは、渡邉美樹社長のカリスマ経営・トップダウン型からポストカリスマ経営・ボトムアップ型へと転換を図っている最中である。従って、各店の若い店長クラスがどれだけ経営者感覚を身に付けて現場で最適な意思決定をするかが求められているらしい。大きな志を持って和民に就職した長男であるが、自らを成長させる場所として和民を選んだのは正解であると確信した。特に渡邉社長を筆頭に目標となる素晴らしい先輩がいることが一番大きい。私も和民に就職するきっかけを作った者としての責任があるので、成長した長男を見て安心した次第である。若い人財が育つ環境、若い世代が夢を持てる企業・・・。それこそが今一番求められる企業である。ワタミは、やはり立派な企業だ。
平成20年6月11日