日本で一番大切にしたい会社 | アルカスコーポレーション/Arcus Corporation

日本で一番大切にしたい会社

先日、名古屋を中心とした中部圏の異業種の経営者が学ぶ勉強会ABCフォーラムの例会に久しぶりに参加しました。このABCフォーラムには、かつて協栄会総会でも講演をしていただいた㈱タニサケの松岡会長やトイレ掃除の活動で知られる「NPO法人日本を美しくする会」の田中義人会長(東海神栄電子工業社長)、私の友人である三重県の赤塚建設赤塚社長らも名前を連ねる歴史ある勉強会です。9月には、近藤会長以下12名の会員が南砺市に視察研修に来られて、我が社の2階研修室にて南砺市田中市長の講演も開催させていただいたばかりです。

 さて、そのABCフォーラムの11月例会の講師は、ベストセラーになった『日本でいちばん大切にしたい会社』の著者で法政大学大学院政策創造研究科の教授である坂本光司氏でした。私は、この坂本教授の書かれた『日本でいちばん大切にしたい会社』と続編の『日本でいちばん大切にしたい会社2』を読み、大きな感銘を受けました。まさに本来企業が目指すべき理想の姿は何かを再確認させていただきました。今回、㈱タニサケの松岡会長のご尽力により坂本教授の講演が実現し、ぜひとも生でお話が聴きたくて参加させていただきました。

坂本教授の話を簡潔にまとめると、ポイントは「社徳」のある企業にならなくてはならないということです。社徳のある企業とは、どんな企業なのかと言うと、「5人に対する責任」を果たす企業であるということ。①社員とその家族を幸せにする②外注先・下請企業の社員を幸せにする③顧客を幸せにする④地域社会を幸せにし、活性化する⑤自然に生まれる株主の幸せという5人への責任を果たすことができる企業ということです。(顧客が3番目に来ていることに注目)大企業を含む多くの企業でこの順番を間違えており、特に今、大企業が変わらなければ国の将来は危ないとの指摘でした。

 また、経営で一番大切なことは「継続」だということです。業績や成長は、継続するための手段に過ぎないということです。そして、経営資源を「人、モノ、金(+情報)などと言いますが、坂本教授の経営学では、「一に人財、二に人財、三に人財」で、あとは人を幸せにする道具という位置づけだそうです。企業が発展するかどうかは、市場に感動を与える商品・サービスを作る社員、提供できる社員がいるかいないかであり、つまり不況を克服できる唯一の経営資源は「人財」だということです。不況になるとほとんどの企業が採用を控えますが、本来は「好況だから人財が欲しい。不況だからなおさら人財が欲しい」というのが正しいのだということでした。

 今、建設業界は凄まじい価格競争になっています。リーマンショック後の景気の減速の影響で民間設備投資が低調な中、公共事業が2割近い大幅削減になり、少ない物件を奪い合う図式です。しかし、坂本教授は、価格競争を無くせと仰っています。それには、市場に感動を与える商品・サービスを創って提供することが必要です。それを生み出すのは、まさに「人財」であり、常に有能な人財を求める姿勢、人財の育成を忘れないで「5人」に対する責任を果たすことができる企業=「信頼・感謝・尊敬される社徳のある企業」づくりに邁進しなければならないと強く感じた次第です。
坂本教授は、『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズが多くの企業経営者に支持されたことによって、この国を変えるムーブメントを起こすことができると希望を持つようになったと仰っています。今後も自分の人生を賭けて、大企業を変え、この国の中小企業経営の現状を変えるために尽力すると力強く仰っていました。素晴らしい講演でした。開催地の名古屋は、大手企業の下請が多いところです。私の横にいた大手の下請をしている企業の奥さんが涙を流して聴いておられました。リーマンショック以降、多くの企業が厳しい中で頑張っています。我々も負けるわけにはいきません。勇気と感動をいただき感謝です。
最後に坂本教授の言葉で一番印象に残った一言を書き添えます。

人の優しさは、流した涙の量に比例する