『苦情10項目』

理想の学校を創ることを夢見ていたうちの長男が、私がプレゼントした渡邉美樹ワタミ社長の書かれた『さあ、学校を始めよう』という本を読んで感動し、ワタミへの就職を決めてこの春から働いている。元々私の学生時代の先輩が、ワタミ(当時は、『つぼ八』のFC店を展開する飲食ベンチャーであった)の創業間も無い頃からの幹部社員であったこともあって、早くから渡邉社長には興味を持っており、高杉良の実名小説『青年社長』をはじめ、数多くの渡邉社長関連の書籍を読み漁ってきた。そして、その先輩からもワタミ時代の社員教育のノウハウを直接指導していただき、その中から我が社の経営の中に多くのアイディアを取り入れてきた。それが今、我が社の社員育成の仕組みづくりに役に立っている。 先日、うちのカミさんが、名古屋駅前で働く長男の店に友人らと共に客として訪れた。長男は、新卒の社員としてアルバイト学生らと共に頑張って働いている。そんな素振は見せないが、慣れない環境できっと大変な思いをしながらの仕事であろう。ワタミは、居酒屋であるから午後3時に集合するらしいが、長男は午後1時には店に行って準備をしているという。さすがに志を持った男は違う。若いうちに人より少しでも多くの苦労をした方がきっと将来大きな花が開くと私は確信しているので、長男のその姿に内心嬉しい気持がしている。 居酒屋チェーンの中では、飛び抜けた急成長を遂げて上場企業になったワタミであるが、ここに来て居酒屋部門は苦戦していると聞いている。最近では、介護施設の運営会社をM&Aで手に入れてその方面に力を注いでいるとも聞く。しかし、本業は「居食屋」と呼ばれる居酒屋部門であるので、今、再度、居酒屋部門のてこ入れを行なっているようである。 そんなワタミの名古屋駅前の店に行ったうちのカミさん。自分の息子がお世話になっている店にもかかわらず、厳しいチェックを忘れない。『居酒屋甲子園』という日本一の居酒屋を決める大きなイベントがあるのだが、その中で上位に入った名古屋の『寅“衛門』やその『居酒屋甲子園』を主催する大嶋さんが経営する渋谷の『てっぺん』などのレベルの高い店を知っているカミさんからすれば、気になる点がいくつかあったのであろう。気に入らなかった点を『苦情10項目』としてまとめて長男に手渡した。それを見た店の店長らは、大変素晴らしい対応で即座に苦情に応えてくれたという。 しかし、話はそれで終らない。只者ではないうちのカミさん。富山に戻るとすぐに渡邉社長に直接、巻紙に筆で息子がお世話になっている御礼を書いて送ったのである。そしてその中に『苦情10項目』を書いて渡して素早く良い対応をしてもらったことも同時に書き添えたのであった。 そこからが並の経営者と渡邉社長は違う。その手紙を読むやいなや、名古屋駅前の店に直接電話を入れて『苦情10項目』をすぐに見せるように言ったらしい。さ~て店は大騒ぎ。そりゃマスコミでも有名な渡邉社長から直接電話が来ることなんか滅多にない。てんやわんやの大騒ぎになったという。普段から落ち着いている長男からも少々困惑気味のメールがカミさんに届いた。しかし、うちのカミさんクールなもの。息子の困惑振りを楽しんでいるかのようであった。 そして数日後、なんと渡邉社長から速達でうちのカミさんに自筆の葉書が届いた。そこには、「苦情10項目は、まだ私のもとに届いておりませんが、必ず読ませていただきます。今後もご子息さんを応援してあげて下さい。」と書いてあった。大した人である。一部上場企業の社長でここまでやる人が何人いるであろう。本当に素晴らしい経営者だと改めて感動した次第である。長男は是非とも渡邉社長の良いところを学んで大きな人間に育って欲しいと思う。 平成19年5月21日